Youtubeで怪談朗読を配信中の136(イサム)さんの怪談朗読を中心に生録音ファイルをUPしています。作業用BGMや睡眠時のおともにぜひ!

【眼と耳で読む】コジョウイケトンネル【師匠シリーズ】

 

※ウニさんの作品はPixiv及び「怖い話まとめブログ」さまより、
Youtubeの動画は彼岸さんのUPされている136さんの朗読をお借りしています。
耳で捉えた物語を目で文章を追うことで、さらにイメージは大きく膨らんでいくのではないでしょうか。
 
 

 


 
 

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「コジョウイケトンネル」

 

師匠には見えて僕には見えないことがしばしばあった。

 

夏前ごろ、オカルト道の師匠に連れられて、コジョウイケトンネルに深夜ドライブを敢行した。

コジョウイケトンネルは隣のK市にある有名スポットで、近辺で5指に入る名所だ。

K市にはなぜか異様に心霊スポットが多い。

道々師匠が見所を説明してくれた。

「コジョウイケトンネルはマジで出るぞ。手前の電話ボックスもヤバイが、トンネル内では入りこんでくるからな」

入りこんでくるという噂は聞いたことがあった。

「特に3人乗りが危ない。一つだけ座席をあけていると、そこに乗ってくる」

僕は猛烈に嫌な予感がした。

師匠の運転席の隣にはぬいぐるみが座っていた。

僕は後部座席で一人観念した。

「乗せる気ですね」

トンネルが見えてきた。

 

手前の電話ボックスとやらには何も見えなかったが、トンネル内に入るとさすがに空気が違う。

思ったより暗くて、僕はキョロキョロ周囲を見まわした。

少し進んだだけでこれは出ると確信する。耳鳴りがするのだ。

僕は右側に座ろうか左側に座ろうか迷って、真ん中あたりでもぞもぞしていた。

右側の対抗車線からくるか、左の壁側からくるのか。

ドキドキしていると、いきなり師匠が叫んだ。

「ぶっ殺すぞコラァッァ!!!」

僕が言われたのかと縮みあがった。

「頭下げろ、触られるな」

耳鳴りがすごい。しかし何も見えない。

慌てて頭を下げるが、見えない手がすり抜けたかと思うと心臓に悪い。

「逃げるなァ!!逃げたらもう一回殺す!」

 

師匠が啖呵を切るのは何度か見たが、これほど壮絶なのは初めてだった。

「おい、逃がすな、はやく写真とれ」

心霊写真用に僕がカメラを預かっていたのだ。

しかし・・・

「どっちっスか」

「はやく、右の窓際」

「見えませんッ」

「タクシーの帽子!見えるだろ。逃げるなコラァ!殺すぞ」

「見えません!」

ちっと師匠は舌打ちして前を向き直った。

ブレーキ掛ける気だ・・・

俺は真っ青になって、めったやたらにシャッターを切った。

トンネルを出た時には生きた心地がしなかった。

 

後日、現像された写真を見せてもらうと、そこには窓とそのむこうのトンネル内壁のランプが写っていた。

師匠は不機嫌そうに言った。

「俺から見て右の窓だった」

よく見ると、窓に映るカメラを構えた僕の肩の後ろにうっすらと、

タクシー帽を被った初老の男の怯えた顔が写っていた。

 

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怖い話まとめブログ/師匠シリーズ「コジョウイケトンネル」より転載させていただきました。

 
 

『師匠シリーズ』作者、ウニさんについて

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2016年7月30日発売予定。予約受付中です!

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